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「モノからコトへ」の現代において考慮すべきプロダクトデザイン

コラム 2021.12.23

高度経済成長期には次々にモノが生み出され、 人々はモノを持つことで、満足度が高まっていました。しかし、モノが満ちあふれている現代では、「モノ」を持つよりも、体験や経験を重視する「コト」に目が向けられています。「良いものを作れば売れる」と言われた時代が、 変革期を迎えている中で、プロダクトデザインをどのように考慮すると良いのでしょうか。

【目次】 
1.モノ消費からコト消費への移り変わり
2.製造業にとってのモノ消費とコト消費とは
3.製造業におけるコト消費の例
4.今回のまとめ

モノ消費からコト消費への移り変わり

モノ消費とは、形ある商品を購入することです。誰もが購入する生活必需品をはじめとして、 生活の利便性を目指すための商品や、高級品・ブランド品などの商品を購入するのは、全てモノ消費です。 これに対しコト消費は、お金を払ってさまざまな体験や経験を得る行為をさしています。旅行・趣味・グルメ・リラクゼーションなどが主な例です。世の中に物があふれている現代では、目新しい商品を見かけるチャンスが激減しました。
この中で消費者が体験に目を向け、自分の心が満たされるような体験や行動を求めるようになったのです。

製造業にとってのモノ消費とコト消費とは

製造業は、商品を製造する職種ですので、コト消費はあまり結びつかないと思われるかもしれません。しかし近年の製造業では、「顧客経験価値」という言葉が注目を集めています。これは、消費者が商品を購入するまで、もしくは購入した後に、どのような心情を持っていたのかという経験を価値化するものです。顧客経験価値は、知覚的・感覚的・創造的・行動的・準拠集団の5つに分類されます。
モノを買って満足するだけでなく、買ったモノを活かしてどのような経験ができるか、満足するにはどうしたらいいのかなどを考えることが、これからの製造業に求められています。製造業において、モノ消費にコト消費をプラスするのには、消費者のニーズが変化していることが要因のひとつです。高性能な製品ほど売上が伸びた時代から、性能は限定されても消費者のニーズに合った製品が売れる時代に変わってきています。

製造業におけるコト消費の例

具体的に、製造業におけるコト消費には、どのようなものがあるのかを紹介します。自動車を購入すると、消費者は数十万円から数千万円のまとまった金額を支払います。この金額は、実は自動車を購入するだけでなく、自動車を購入することで得られる利便性や、自己満足感に対してかかっている金額でもあるのです。例えば、移動や通勤の手段となる・ 行動範囲が広がる・お気に入りの車を買ったなどという心理です。
また、ゲームメーカー・任天堂のWiiは、ただゲームをするだけでなく、ゲームをすることで体を動かし、家族みんなで楽しめる体験が多大な支持を受けました。これにより、SONYのPlayStationにくらべ、販売台数で大きな差をつけていたのです。海外の製造業においても、モノ消費からコト消費への注目度は高く、必要以上に商品の性能を上げない代わりに、消費者に対するサービスに重点を置く企業が増えています。

今回のまとめ

日本の製造業は、「良いものを作れば売れる」 との考えで、発展を続けてきました。この考えも賞賛すべきなのですが、それに加えて、消費者が満足できる体験を提供できる製品づくりが大切なのです。高品質なだけではなく、消費者が求める品質を適宜組み入れることが、プロダクトデザインにおいても重要となってくるでしょう。