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放電加工とは?試作品製作の際に用いるメリットとデメリット

コラム 2022.11.03

「放電」と聞いて何を思い浮かべるでしょうか?放電の身近な例として、静電気があります。乾燥した冬の日に車のドアノブなどに触れると、バチッと衝撃を受けることがありますが、痛みを伴うこの静電気で嫌な思いをしたことがある人も多いのではないでしょうか。
現在では、我々の生活必需品ともいえるスマートフォンやカメラなどを製造する精密機械の放電加工技術が進歩し、あらゆる分野の製品に活かされています。
ここでは、放電加工の基礎知識、試作品製作に用いるメリット、デメリットについてご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

【目次】
1.放電加工の原理
2.試作品製作における放電加工のメリット
3.試作品製作で放電加工を用いるデメリット
4.今回のまとめ

放電加工の原理

放電加工とは放電現象により発生する熱を利用して対象物を溶かす方法です。水や石油などの液体の中で、加工対象の金属と放電加工機(EDM)の間に放電し、電気エネルギーで金属を溶かす仕組みです。この工程を繰り返し金属の切断や加工を行います。
加工対象物が電気を通す素材であれば、固さに関係なく加工ができるという大きな特徴を持っており、主に金属加工で用いられています。
放電加工では加工液の中にワーク(作業対象となっている加工対象物)を沈めて放電を行います。工作物と電極間に放電が発生し、工作物が高温になって溶けます。これを継続的に繰り返しながら、金属を加工していく技術です。

試作品製作における放電加工のメリット

放電加工は金属の切断や加工によく使われますが、そのメリットは次の通りです。

材質が固くても加工できる

超硬合金のように固い素材であっても意識せずに加工できるので、高硬度の素材加工に適していて、強い強度が求められる金型などの製造に多く用いられます。

高精度の加工もできる

1ミクロン単位の精密な加工が可能です。他の金属加工の方法と比較して細かい形状においても精度が高く、繊細な加工にも適しています。

工作物に触れずに加工できる

放電加工機と工作物の間に放電し加工していきますので、物理的に直接対象物に触れることがありません。工作物に与える負荷が少なくなり、高い精度の加工が可能です。

試作品製作で放電加工を用いるデメリット

一方、放電加工のデメリットは次の通りです。

加工に時間がかかる

放電した熱で、少しずつ金属を溶かしながら加工していくため、また放電し金属を溶かす工程を繰り返すので、小ロット生産には最適ですが、大量生産には時間がかかるため向いていません。

加工できない素材がある

放電による熱で金属を溶かして加工するため、素材が電気を通さない場合は熱が発生しないことにより加工ができません。

コストが高くなる

放電加工機が高価であり、消耗品も多く使用するため全体的にコストが高くなることには注意が必要です。放電により素材だけでなく電極も消耗するため、電極の交換頻度が高くなります。

今回のまとめ

放電加工は通電性のある素材であれば、固い材質であっても精密な加工ができる加工方法です。加工に時間がかかり、コスト面で割高というマイナス面もありますので、それぞれの特徴をよく学び、理解しておきましょう。その上で、試作品製作の目的や理由を踏まえた最適の加工方法を選ぶ必要があります。